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川崎で東京交響楽団が観客のいないコンサート 「一つの挑戦だった」20万人視聴

「一つの挑戦だった」と話すミューザ川崎シンフォニーホールの前田明子さん

「一つの挑戦だった」と話すミューザ川崎シンフォニーホールの前田明子さん

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 ミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市幸区大宮町)で3月、東京交響楽団とドワンゴ(ニコニコ生放送)による「観客のいないコンサート」が行われた。

観客のいないコンサートでデビューしたミューザ・ソリスト・オーディション2017合格したピアニストの黒沼香恋さん

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 ミューザ川崎シンフォニーホールと公益財団法人東京交響楽団が予定していた「名曲全集 第155 回」(3月8日)と「モーツァルト・マチネ第40 回」(3月14日)が、新型コロナウイルスにより開催中止に。代わりに行われたのが無観客ライブ無料配信による「観客のいないコンサート」。

 ライブ配信は、ドワンゴの協力を得て「ニコニコ生放送」で行われ、リアルタイムでのコンサート終了時点で3月8日は10万人、14日は7万3千人が視聴。その後も1週間の無料配信を実施。総視聴数は延べ20万人を超える反響があった。

 ミューザ川崎シンフォニーホールの前田明子さんは「8日の放送が始まる直前に、私どもミューザのホームページのサーバーがダウンするほどの反響があり驚いた。ライブ配信はニコニコ動画で行われるが、その前に情報を得ようとしたアクセスが集中。反響の大きさにうれしさがいっぱいだったが対応に忙しかった」と当時を振り返る。

 前田さんには、このコンサートを何としても実現させたいとの思いがあった。8日に行われる予定だった「名曲全集 第155 回」に、ミューザ・ソリスト・オーディション2017合格者でピアニストの黒沼香恋さんが初舞台を予定していた。「若手演奏家にとってオーケストラと共演する機会はそうあるものではなく、ミューザ川崎シンフォニーホールでデビューさせてあげたかった」と前田さん。無観客コンサートになったことをフランスで演奏会に向けて最後の練習を続けていた黒沼さんにミューザのスタッフが連絡をして了解を得た。

 「デビューのコンサートが観客のいないコンサートでいいのだろうかか。悩んでいたが、8日だけでも10万人を超える人々が黒沼さんのピアノの演奏を聴いた。とてもうれしかったし、一生忘れることのできないデビューコンサートになった」と話す。画面にも、視聴者から「8(パチ)、8(パチ)、8(パチ)」と拍手が続いていた。

 ミューザ川崎シンフォニーホールの収容人数は1997席(車椅子席10席含む)。2000人弱が聴くシンフォニーコンサートを10万人が聞くことになった。当日の反応は現在でも続いている。「中学生のときに初めてのコンサートに行った。東京交響楽団だった。上野の東京文化会館のホールで名曲コンサートを聴いてシンフォニーの響きの素晴らしさに驚いた記憶がある。それがよみがえった」と多摩区在住の望月萌さんは話す。当日も配信を楽しんだという。「感動した。それはシンフォニーホールで聞くのと音の質に違いはある。でも、それ以上に、見ている人同士のつながりや、観客がいないのにもかかわらず、懸命に演奏する姿に感動した」と話す。

 前田さんは「一つの挑戦だった。多くの人からの感動の声にこちらが感動している。これからもシンフォニーの素晴らしさを多くの人に伝えていきたい」と話す。

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