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新丸子の和食バル「ちゃぶや」、20年の歴史に幕 「ちゃぶ台返し」も思い出に

店主の陳野昭二さんと美恵子さん

店主の陳野昭二さんと美恵子さん

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 新丸子駅近くの和食バル「ちゃぶや」(川崎市中原区新丸子町)が1月15日の営業を最後に閉店する。

化粧室に置かれたノートには、閉店を惜しむ声が多く寄せられた

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 「ちゃぶ台」をテーマに店づくりを行い、ワインにも日本酒にも合う創作料理を提供してきた同店。「自宅にいるようにくつろいで飲食を楽しんでほしい」との思いから、30坪の敷地に38席ほどのゆったりとした店内には、掘りごたつ席、ソファ席、半個室などを用意する。

 店主の陳野昭二さん(67)は福島県出身。ファッション関係の仕事に就くことを目指し、18歳で上京。服飾を3年経験した後、武蔵小杉の美容室に勤めていたが、美容室が事業を拡張した際に、メキシコ料理店の経営に携わることになり、1995年にその店を引き継ぐ形で独立した。

 「料理のスキルもなかったし、もう無我夢中だった。女房も美容師だったのに、一緒にやってくれて…」と陳野さんは当時を振り返る。当初は綱島街道沿いにあった店を、1998年に現在の場所に移転。その後、業態を「ちゃぶ台で楽しむ」和食バルに転換。「ちゃぶ台に慣れていないお客さまが端っこに手をついてあわや『リアルちゃぶ台返し』という瞬間もあった」と笑う。

 「今でこそこういう店は珍しくもなくなったが、あのころは面白がられて有名人も来てくれた」と陳野さん。当時フロンターレにいた我那覇選手が店を気に入り、家族や友人を連れて来店していたことや、「メレンゲの気持ち」の撮影で訪れた石塚英彦さんが、サンマを食べて「まいう~」と言ったのが忘れられない思い出だという。

 閉店は12月末、急に決まった。閉店の知らせを聞いて家族で来たという、印刷会社「ねこのしっぽ」(中原区上丸子八幡町)の「ねこ社長」こと内田朋紀さんは「15年来の付き合い。料理もおいしくて気遣いもある、誰にでも自慢できる、とっておきの店だった。終わってしまうのはすごく寂しい」と話す。

 閉店の理由については体力が続かなくなってきたこと、及び人材の確保が難しくなったことを一因に挙げる。陳野さんは「夫婦でやりきったという感じがある。店を応援してくれた全ての人に感謝したい。今後のことはまだ分からないが、この経験を街のために生かしていけたら」とほほ笑んだ。

 13日~15日は、予約客のみの営業となる。

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