川崎駅近くの旧東海道沿いに12月19日、「東海道BEER川崎宿工場」(川崎区本町1)のオープニングセレモニーが行われ、関係者50人以上が開店祝いに駆け付けた。
2016年2月に行われた川崎市主催の遊休不動産の利活用を目的とした「リノベーションスクール」の案件である物件オーナーの岩澤克政さんが所有の倉庫を、同スクールに参加していたサニーワンステップ(川崎区日進町3)代表の田村寛之さんらを交え、倉庫のリノベーションの事業提案を検討していたところ、旧東海道、川崎宿、工場というコンセプトから松尾芭蕉の句碑をヒントに「麦酒」に辿り着き、オープンまでに至った。
同クラフトビールの醸造を務める田上達史(たのうえさとし)さんは、以前は予備校の講師として物理を教えていたが、2015年に退職し、すでに閉鎖した「風上麦酒製造」(幸区南加瀬)を2016年に醸造所を自作で立ち上げビール作りを開始する。交通事故で怪我を負い、体力の限界を感じ、ビール職人としてのリタイアを検討していたところ、岩澤さんと田村さんに「一緒にプロジェクトに参画して欲しい」と口説かれ、1年以上の計画を経て開店を迎えることとなった。
田上さんは「ビール職人はやめようと思っていたが、自分の技術を必要としてくれる人が多くいた事に気付いた。このプロジェクトは自分にしかできない事だと思い、参画することを決めた。むしろ自分の人生の定めだったのかなと思った」と話す。「自分が飲みたいビールが無かったので、自分で造っている」とも。
田村さんは「旧東海道に根差したストーリーから店のイメージやコンセプトをみんなで考えた。岩澤さんと出会って約2年間、妥協せずに検討し続けた甲斐があった。これからは地域の方々と共にお店も成長していきたい」と話す。
岩澤さんは「先祖から引き継いできたこの土地で、何かできないかと考えていた。このお店が地域に愛され、川崎宿制定400周年を迎える2023年以降も盛り上げていきたい」と話す。
提供しているビールは、Sサイズ(650円)、Mサイズ(850円)。川崎宿が制定された年とされている年号をネーミングした「1623」、ハーブを使用した黒ビールの「黒い弛緩」、イチゴと県立川崎高校(川崎区渡田山王町)養蜂部のハチミツを使用した「薄紅の口実」、白ビールの「麦の出会い」の4種類。フードメニューは「和牛コンビーフ」(500円)、「厚切りベーコン」(600円)、「炭焼き燻製ミックスナッツ」(350円)、自家製ピクルス(300円)を用意する。
約20坪のビール醸造所内にあるイートインスペースは、和建具と無機質なビールタンクと和の雰囲気の空間で、ビールを飲みながらカウンター越しに対面しているタンクを眺めることができる。下からライトアップされたタンクが川崎の「工場夜景」のよう。背面は「東海道」、「川崎宿」、「多摩川」の近未来をイメージしたミューラルアートが描かれている。席数は、カウンター11席、テーブルが2席。不定期で田上さんがビールの仕込みをしている姿をカウンターから眺めながら食事をすることも。
開店から2週間、田上さんの復活を楽しみにしていたファンらが関東圏以外からも訪れている。
営業時間は、平日=17時30分~23時。休日=12時~23時。年始は4日から。