リリース発行企業:一般社団法人 日本?内療法学会
一般社団法人日本歯内療法学会(所在地:東京都豊島区、理事長:柴 秀樹)は、1.20代~50代の男女/2.歯科医師を対象に、「歯の根の治療(根管治療)」に関する調査を実施しました。
歯は、私たちの生活の質を支える大切な一部です。
しかし、虫歯が進行して歯の根にまで達すると、根管治療が必要になることがあります。
根管治療は、歯を残すための重要な治療法である一方、痛みや治療期間、費用など、さまざまな不安を感じる方もいるでしょう。
では、一般の方々は根管治療についてどの程度の認識を持ち、どのようなイメージを抱いているのでしょうか。
また、歯科医師から見た患者の理解度や不安はどのようなものなのでしょう。
そこで今回、一般社団法人日本歯内療法学会(https://jea-endo.or.jp/)は、1.20代~50代の男女/2.歯科医師を対象に「歯の根の治療(根管治療)」に関する調査を実施しました。
調査概要:「歯の根の治療(根管治療)」に関する調査
【調査期間】2025年3月11日(火)~2025年3月12日(水)
【調査方法】PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
【調査人数】1,029人(20代~50代の一般男女522人/歯科医師507人)
【調査対象】調査回答時に1.20代~50代の男女/2.歯科医師であると回答したモニター
【調査元】一般社団法人日本歯内療法学会(https://jea-endo.or.jp/)
【モニター提供元】PRIZMAリサーチ
約7割が根管治療を「知らない」と回答
根管治療は、虫歯が神経まで進行しても歯を抜かずに残せる治療で、神経や感染組織を取り除き、根管を消毒・密封する治療です。
適切に処置すれば20~30年と長持ちすることもあります。
通常の虫歯治療と違い、歯の内部を処置するため回数が多くなりますが、しっかり治療すれば自分の歯を維持できる大きなメリットがあります。
では、20代~50代の男女のどのくらいの方が根管治療について知っているのでしょうか。
「根管治療について、どの程度知っていますか?」と質問したところ、『詳しく知っている(9.6%)』『名前は聞いたことがあるが、詳しくは知らない(25.5%)』『全く知らない(64.9%)』という回答結果になりました。
この結果から、約3分の2の人が根管治療について全く知らないことが明らかになりました。「詳しく知っている」層は1割にも満たず、「名前は聞いたことがあるが詳しくは知らない」と答えた人を含めても、認知度は4割程度にとどまります。
実際に、根管治療を受けたことがある方はどのくらいいるのでしょう。
「これまでに歯の根の治療(根管治療)を受けたことがありますか?」と質問したところ、以下のような回答結果になりました。
『現在治療中である(4.0%)』
『過去に治療を受けたことがある(17.8%)』
『治療を勧められたが受けていない(3.8%)』
『受けたことがない(74.4%)』
つまり、約8割の人が根管治療を受けたことがないのです。
本来、根管治療が必要になるのは重度の虫歯や外傷によって神経が侵された場合ですが、多くの人が適切なタイミングで治療を受けていない可能性があります。
根管治療を受けた人の声-「歯を抜かずに済んだ」が最大のメリット
根管治療を受けたことがある方はどのようなメリットを感じたのでしょうか。
根管治療の経験について『現在治療中である』『過去に治療を受けたことがある』と回答した方にうかがいました。
「実際に根管治療を受けて良かったと思うことは何ですか?(複数回答可)」と質問したところ、『歯を抜かずに済んだ(45.6%)』と回答した方が最も多く、次いで『しみる感じがなくなった(23.7%)』『治療後の違和感が少ない(16.7%)』となりました。
根管治療の最大の利点は、自分の歯を維持できることです。抜歯を避けることで、噛み心地や咀嚼能力を維持し、インプラントや入れ歯を避けられるというメリットがあります。
では、根管治療を受けたことがない方は、根管治療に対してどのような理解をしているのでしょうか。
「根管治療について、どのようなイメージを持っていますか?(複数回答可)」と質問したところ、『痛そう・怖い(54.7%)』と回答した方が最も多く、次いで『費用が高い(44.1%)』『治療期間が長い(20.6%)』となりました。
根管治療は「痛い」「怖い」といったイメージが強く、治療に対する心理的なハードルが高いことがわかります。「自分の歯を残せる」といったポジティブな印象よりもマイナスな印象を持つ方が多いようです。
また、「費用が高い」という認識も根管治療の障壁となっています。保険適用の治療であれば数千円~1万円程度で済む場合もありますが、自費診療の場合は数万円~十数万円かかることもあるため、情報の伝え方によっては不安を与えやすいと考えられます。
さらに、根管治療が重要である理由の一つは、適切な処置を受けないことで生じるリスクの大きさにあります。
「根管治療を適切に行わないと、どのような問題が発生すると思いますか?(複数回答可)」と質問したところ、『わからない(40.9%)』と回答した方が最も多く、次いで『歯を失う可能性がある(28.2%)』『痛みや腫れが再発する(25.3%)』となりました。
つまり、約4割の人が根管治療を受けないことのリスクを正しく認識していないことが浮き彫りになりました。
根管治療を受けるかどうかの判断を下すためには、治療によって得られるメリットだけでなく、治療を怠った場合に何が起こるのかを正しく理解していることが重要です。しかし、その知識が十分に浸透していないことが明らかになりました。
つまり、正しいリスク認識ができていないこと自体が、患者にとっての課題であり、これを改善するためには、歯科医療の側からの積極的な情報提供が不可欠となります。
そこで歯科医師に根管治療についてうかがいました。
根管治療のメリットは「発音や会話に影響を与えない」
「患者が根管治療について正しく理解していると感じますか?」と質問したところ、約6割の方が『全く感じない(16.6%)』『あまり感じない(46.2%)』と回答しました。
前問で、患者の認知度が低いことが浮き彫りになったことと同様に、約6割の歯科医師が患者の理解不足を問題視しているようです。
また、「根管治療に対して不安を持っている患者は多いと感じますか?」と質問したところ、約8割の方が『とても感じる(32.5%)』『やや感じる(51.9%)』と回答しており、患者の不安解消が治療の成功に重要な役割を果たすことがうかがえます。
では、患者さんの不安を軽減するためにどのような工夫をしているのでしょうか。
前の質問で『とても感じる』『やや感じる』と回答した方に、「根管治療に対する患者の不安を軽減するために、どのような工夫をしていますか?(複数回答可)」と質問したところ、『痛みの少ない治療法の採用(54.7%)』と回答した方が最も多く、次いで『視覚資料(模型やイラスト)の使用(40.9%)』『治療内容の詳細な説明(39.7%)』となりました。
患者さんの不安を軽減するために、技術的な工夫だけでなく、患者とのコミュニケーションを強化することで理解を深める努力が行われていることがわかりました。
では、根管治療を行うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。
「根管治療を行うことのメリットは何ですか?(複数回答可)」と質問したところ、『発音や会話に影響を与えない(41.0%)』と回答した方が最も多く、次いで『他の歯への負担が減る(36.1%)』『咀嚼機能を維持し、消化を助ける(34.5%)』となりました。
根管治療がもたらすメリットは、患者自身が最も認識している「歯を抜かずに済む」ことだけではないようです。歯を残すこと自体が、発音や咀嚼機能など、日常生活の質に直接影響を与えることが、歯科医師の視点からも明らかになりました。
では、根管治療を適切に受けなかった場合、どのような問題が発生するのでしょう。
「患者が根管治療を適切に受けなかった場合、どのような問題が発生するか教えてください」と質問したところ、『歯を失うことで噛みにくくなり、食事の楽しみが減る(41.0%)』と回答した方が最も多く、次いで『最終的に抜歯が必要になる(39.5%)』『痛みや腫れが再発する(38.9%)』となりました。
根管治療を怠ることによる最大のリスクは「歯を失うこと」であり、それが日常生活や健康にも大きな影響を及ぼすことが明らかになりました。
【まとめ】「知らない」ことがリスクに-根管治療の認知不足がもたらす影響と課題
今回の調査で、20代~50代の男女の多くが、根管治療について全く知らないことが明らかになりました。また、実際に根管治療を受けたことがある人は約2割にとどまり、8割の人が治療経験がないことがわかりました。
約6割の歯科医師も、正しく理解していると感じないと回答する結果となりました。
つまり、認知度の低さは、治療への不安や誤解を生み、適切なタイミングでの治療を遅らせる要因となっています。
根管治療は、虫歯が進行した場合でも歯を保存するために重要な治療ですが、一般市民にはその認識が浸透していません。根管治療が何をするものなのか知らないことで、治療が必要になっても適切な判断ができないという問題が浮き彫りになりました。
さらに、根管治療を受けないことによるリスクを「わからない」と回答した方が最も多く、根管治療の必要性が認識されていないだけでなく、治療を受けなかった場合のデメリットに関しても知られていないようです。
その結果、抜歯という選択肢をとってしまう方が多いのではないでしょうか。
根管治療のメリットとして、「歯を抜かずに済んだ」と実感している方が最も多く、歯科医師の視点からは、根管治療のメリットは「歯を残せる」ことだけではなく、咀嚼や発音など生活全体に良い影響を与えることが示されました。
つまり、根管治療を行うことは、「歯を守る」だけでなく、日常生活の質(QOL)を維持するための重要な手段でもあるのです。
根管治療は、「最後の手段」ではなく、歯を残すための「第一の選択肢」として考えられるべき治療です。治療の本当の価値を理解し、適切なタイミングで判断できるようになることが、結果的に自分の歯を長く維持することにつながるのではないでしょうか。
一般社団法人日本歯内療法学会は歯内療法(根管治療)の学問と技術を研究しています
今回、「歯の根の治療(根管治療)」に関する調査を実施したのは、一般社団法人日本歯内療法学会(https://jea-endo.or.jp/)です。
■歯内療法とは
https://jea-endo.or.jp/public/about.html
歯内療法とは「歯の内部の治療」をすることです。
歯の中には、一般的に歯の神経と呼ばれている「歯髄(しずい)」という軟らかい組織があり、むし歯や歯の亀裂などで歯髄が細菌に感染すると、歯が痛んだり歯ぐきが腫れたりします。
そのようなとき抜歯をせずに、歯を残すためにする治療が「歯内療法」で、一般的に歯の神経の治療と言われています。
根管治療は歯内療法の一種で、最も一般的に行われる、歯髄の一部や全部を除去する治療方法です。
歯を支える土台である根(根管)の治療をするので根管治療と呼ばれます。
歯を保存したいという気持ちと、そのための良い方法を探究し続ける努力から生まれたこの『歯内療法(根管治療)』により、 みなさんの歯をさらに長生きさせることができます。
■なぜ、根管治療は大切なの?
https://jea-endo.or.jp/public/root_canal_treatment.html
むし歯になった歯でも失うことなく根管治療をすることによって、もとの歯のように長く機能させることができます。
根幹治療→根管治療では治療する前に、痛み、歯肉の腫れ、歯の外観を注意深く観察し、さらにX線写真、歯髄の生死の診査などから感染の状態を知るための様々な方法で調べます。
その結果をもとに診断して、歯をもとに保つために病状の原因となる歯の根の中心を通る細い管「歯髄」の処置を行います。
根管は直経1mm以下と非常に細く、しかも硬くなった部分や、複雑に曲がっている部分があります。
根管に小さな器具を通過させて感染源となった歯髄を取り去って清掃し、形態を整えるという大変高度な作業が行われます。
根管治療には、質の高い治療を提供するためのトレーニングと、高度な技術が必要なのです。
根管治療が不完全であったり、新たな感染や損傷が起こったりした場合は、再治療が必要となります。 しかし、現在の治療技術なら90%以上の確率で歯を救うことができます。
根管治療の考え方からすれば、「歯を抜く」ということは、非常に稀なことです。
「歯を残す」ということが、いかに大切であるか、そして、歯が健康であることの大切さを、一本の歯が教えてくれると思います。
一般社団法人日本歯内療法学会は、歯を保存し、そのための良い方法を探究し続けるために、 歯内療法(根管治療)の学問と技術を研究しています。
【会社概要】
一般社団法人 日本?内療法学会
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