川崎ブレイブサンダースは、3月13日にさいたまスーパーアリーナで行われた「第 96 回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」ファイナルラウンドで宇都宮ブレックスを退け、東芝時代から7年ぶり4度目の優勝を果たした。Bリーグ参戦後では、初のタイトル獲得となり悲願の一つを達成した。
2020年1月21日に行われた前大会「第95回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」で「準優勝」のボードを持つ辻直人選手
日本バスケットボール協会の三谷裕子会長は、天皇杯・皇后杯の魅力を「負けたら終わりの一発勝負。通常のリーグ戦とは違う見ごたえがある」と、ノックアウト方式によるトーナメントゲームの魅力を話す。
川崎が優勝した瞬間。観客席から「待たせやがって~祝!」の文字が掲げられた。この言葉に応援を続けてきたサンダースファミリーの気持ちが凝縮。川崎から駆けつけたファンは(川崎市幸区在住)「今シーズンは厳しい戦いを続けている。この優勝がリーグ戦での力になるはず。いつまでも無冠では許されなかった」と目を潤ませる。
佐藤賢次ヘッドコーチはタイトル獲得ができなかったことを「忘れもの」としてとらえ「2年がかりで忘れものを取りに行く」と掲げてシーズンに入っていた。
天皇杯優勝で辻直人選手(#14)の喜びは人一倍だった。ほぼ1年前の2020年1月21日。川崎は「第95回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」でファイナルまで勝ち進んでいた。チームの司令塔・篠山竜青選手(#7)と、エナジーエンジンの藤井祐眞選手(#0)を欠いて参戦。辻選手は、時にシューター、時にポイントガードとしてニック・ファジーカス選手(#22)とともにゲームをけん引してきた。
決勝戦の相手はサンロッカーズ渋谷。ボールを回され疲労が蓄積する川崎。その結果は 渋谷79-73川崎 で祈願達成は実現できなかった。「その姿は満身創痍。ファイナルの決勝まで進んだのが不思議なくらい」「コートに出続ける選手の足が疲労で震えていた。今でもその姿は克明に覚えている」など壮絶な展開を多くの川崎ファンが目視している。
悲願達成ならずセレモニーで「準優勝」のボードを持った辻選手。このとき「次は必ず『優勝』のボードを持ちたい」と思っていたに違いない。それが実現した。表彰式から記念撮影へと進むセレモニーで終始ボードを手放さなかった。ボードは「準優勝」から「優勝」に。賞金が「1千万」から「3千万」に増えていた。辻選手は自ら脚立の上に立ち誇らしげに「優勝」ボードを掲げていた。
ゲーム展開は、両チームともゲーム主導権を取れず互角に展開したの第1Q(クォーター)は 宇都宮20-19川崎。第2Qは、川崎は強固なディフェンスで宇都宮ブレックスを抑えながら篠山竜青(#7)、増田啓介(#11)、ジョーダン・ヒース(#35)の各選手が3ポイントを決めてリードを奪い 宇都宮34-41川崎で前半を折り返す。後半第3Qは、宇都宮の反撃で点差が縮まるも辻直人選手(#14)の連続3ポイントとスティールからの得点で流れを川崎に導いて 宇都宮48-58川崎 とリード。その流れを守り切って 宇都宮60-76川崎 で勝利した。
川崎にとって悲願と忘れものは二つ。天皇杯優勝とリーグ優勝。苦しいゲームを続け東地区3位の川崎。もう一つの悲願達成に向けて終盤戦のレギュラーシーズンに全力で挑んでいく。