東急電鉄の主力車両として約半世紀に亘って活躍してきた8500系が、2022年度までに新型車両へと置き換えられる。
8500系は、新玉川線(二子玉川~渋谷)や営団地下鉄(現在の東京メトロ)半蔵門線との直通運転開始に伴い1975年により導入された。翌年の1976年には、オールステンレス車体やワンハンドルマスコンなどの先進的技術が評価され、東急として初めて鉄道友の会ローレル賞を受賞している。
1976年~1991年の期間、東横線(渋谷~桜木町)でも使用されていた経緯があり、武蔵小杉を中心に川崎市内でも8500系ファンは多い。「車両売ります」と書かれたホワイトボードで話題となった池上駅。こちらでも引退を惜しむ声が聞こえる。
当初は4両編成で登場したが、直通運転開始や沿線の発達によって長編成化を繰り返し、1983年より現在と同じ10両編成での運転を開始。以降、運用範囲の拡大や輸送力増強に伴い車両を増備した8500系。1991年までに400両を導入し、東急で最多両数を誇る形式となった。
快適な走行音の銀色の車両は一際目立つ存在となった。新型車両とは車齢や構造に大きな違いがあることから、8500系には特有の魅力があるという。東急運輸部(運転士)の上田雄介さんは、「降雨時は車輪が空転してなかなか前に進まない。最近の車両は静かで揺れないが、8500系は音や振動を体で感じて運転していた」と話す。元整備士の橋本信彦さんは、「8500系は改造の歴史でもあり、技術向上やニーズに応えて進化してきた車両。思い返せば手のかかる車両だったが、その分愛着を持てる車両だった」と、8500系の往年の活躍を振り返る。
一時最多勢力だった8500系は、2003年から置き換えが開始され、現在4編成が在籍しているのみ。多くは廃車となったが、一部は国内外の鉄道会社に譲渡されており、伊豆急行や長野電鉄、インドネシア・ジャカルタなどでは現在も活躍している。
橋本さんは、「地方鉄道で活躍している8500系を見ると、入社同期の私としては誇らしい気持ちになる。ステンレスの丈夫な車体はまだまだ活躍できる。地方鉄道で銀色の車体を輝かせながら走り続けて欲しい」と期待を寄せる。